代表者の一言
平成28年4月の代表者の一言
いつの頃からか桜の開花が早まって、3月下旬になることが多くなりました。毎年、桜の花びらを愛でるこの季節には、私達、特に卒園児担当の保育士 は、卒園する子ども達と日常をともにできなくなる寂しさを感じつつ、未来に向かって羽ばたく子ども達の成長した姿に改めて感動を覚えます。また、この時期 には、次の新しい出会いもあります。子どもが秘める未来への可能性や純粋な屈託のない笑顔との関わりの中で、私達は日々新たなパワーをいただいているので す。
私がこの仕事に就こうと考えたのは、我が子二人の成長を支えてくれた保育園生活と、日々励ましてくれた当時の関 係者の方々への今も変わらぬ感謝の気持ちからです。先日の入園者説明会において、初めての保育園生活に不安を感じておられる保護者の方々からご質問やご相 談を受ける度に、22年前のことを思い出していました。当時は、産休取得すら社会的に稀な時代であり、当然、仕事を続けて育児を他人に委ねてしまうこと、 「保育園に子どもを預ける」ことは非常に稀なことでした。そのため、私自身、子どもに対して言いようのない罪悪感を抱きながら、子どもがいつか私の選択を 「良かった」と肯定的に受け入れてくれればと願って、時間を超えた子どもへの接し方、愛情の注ぎ方をしようと気を配りながら育児を続けていました。また、 時短勤務、育児休暇の確立を求めて、慌ただしい中での署名活動や様々なシンポジウムへの参加を通じ、非力ながらも育児環境整備の一助になれたらと熱く願っ てもいました。このように前に進めたのは、ひとえに子どもの成長を共感し、仕事、家事、育児の両立を支えてくれた保育施設があったからこそです。
今 春、二人目の子である娘が、無事志願大学に合格したことで、私の「能動的な子育て」に終止符を打ちました。何やら「卒業」と似たものを感じます。今後は、 経済的支援はするものの、娘自身が、自由な環境の中で自ら考え、選択し、行動することになります。思えば、娘が小学3年生のとき、突然「お兄ちゃんの夕食 はわたしが作るから、ママはたくさん仕事していいよ。」という大人びた発言をし、私はその言葉に背中を押されて一層仕事に奮闘することができたのです。 もっとも、仕事量=時間数の面は否めませんので、子ども達には申し訳なく、だからこそ必要とされるときは可能な限り一緒に時間を共有し信念をもって行動し ながら、前向きに仕事に取り組む姿を見せてきました。(上の子にはできませんでしたが)娘には「勉強しなさい。」とは一度も言わず、「努力は必ず報われる よ。笑顔で夢を目指し思い行動し続けると必ず叶うよ。」と言い続けてきました。雨の日も風の日も保育園バックを斜めにかけ、時に二人の子を必死に両手で抱 きながら、時間と戦い続けた保育園生活は延べ10年。娘から大学合格時に「私が努力できたのは、お母さんが努力して仕事を頑張っているのに影響されたと思 う。お母さんの努力があって私も努力できたんだ。」との言葉をもらい、思いが伝わっていたことに感無量となりました。娘は、塾にも予備校にも行かず中高通 じて6年間皆勤でした。「努力は必ず報われる」との言葉を実践して無事合格を果たした娘の姿を見て、生後58日から仕事に復帰し、平日は時間をほとんど共 有できない中でも、相互に信じ愛し合い、私の気持ちを受け留めてもらえていたのだと実感しました。
4月からは、息子 が大岡山に、娘は日吉へと通います。「近いから一緒に行くの?」などと話をしていたら、ふと、娘が小学校に入学して間もない頃に、私が早く家を出発したい がばかりに、息子が娘の手を引っ張って学童に向かって歩いていた姿を思い出しました。保育園の前で二人の子から同時にダブルで「いやいや」をされ「今日は 行きたくない。」と言われる中を、「いつも傍に居られなくてごめんね。」と後ろ髪引かれる思いで職場に向かったことなどが鮮明に思い浮かびます。これまで 沢山の友人や社会に支えられて成長した二人を見て、保育事業を通じてより意義ある社会的役割を果たすことが私の責務であると自覚します。
こ れからも、沢山の方々と出会い、意見や相談、時に苦情もいただきながら、私自身もさらに成長しなければなりません。卒園するお子様、保護者の皆様、関係者 の方々から頂戴した勇気と愛を糧にして、意義ある社会福祉活動に努め、皆様から感謝される保育施設とすべく職員一同尽力して参ります。
小鳩グループ代表 山本 育子