代表者の一言
平成28年8月の代表者の一言
今月に入り来年度の新卒者採用に向けて、当グループにて卒業生を受け入れている学校にご挨拶にお伺いしております。その際、各校の就職支援課の先生方から、学生の動向、学生生活、就職への意識・取組みや「最近の就活事情」など様々な話を伺うのですが、何より驚くのは、子どもの就職に親が意見し指示すること、さらには親向けの「就職説明会」が開催されていることです。そして、先生方も、この現状に少なからず複雑な心境でいらっしゃるようです。
少子化が進む中、幼児向けの教育プログラムが充実し、保護者の経済的負担において選択できるメニューなどもいろいろとありますが、子どもの自主性、子どもの自由選択という肝心なことが欠落してしまっているように感じます。幼児教育に関し「児童神聖論」を唱えたフレーベルは、子どもの創造性は「遊び」の中から育まれるといいます。早期教育と情操教育をきちんと区別し、人と比べず、成果を求めず、主体性を重んじて、「どうせ無理」と思わせないことが、本当に必要な「教育」だと考えます。
保護者の方々が子どもに夢と期待を抱く結果、手助けが過剰になってしまうご家庭が多くあるかと思います。特に一人目のお子様の場合にその例が多いのではないでしょうか。かく言う私もその一人であり、息子が小学5年生になって急に中学受験をしたいと言い出した時に、偏差値30台からのスタートでもあり必死に支援をしたのですが、私が頑張って何を教えても息子の成績は一向に上がりませんでした。ところが、ある日息子自身が目標校を定めた途端、成績が上がって偏差値も30以上伸びたのです。私は、この我が子を通じての経験から、子どもに目標や目的を自主的に持たせることの大切さを、身をもって知ったのです。
目標校に入学後、息子の成績は320人中いつも300番台、毎学期担任の先生から呼び出され、家庭での学習について問われることが続きました。ただ、私は先の経験から「本人に任せているので」と、恐らく担任の先生にはしっくりこない回答をして面談をやり過ごしていました。とは言え、高校への内部進学時に成績下位者10数人の退学者が出る学校でしたので、中学3年生の1学期末に先生に呼び出された際に三者面談としてもらい、(先生から説教を受けた後に)息子の前で「この子は自分が必要だと思えばやる子です。私は子どもを信じています。」と真顔で訴えました。息子に賭ける気持ちでした。そして、この時に「強要はダメ。子どもの未来は子ども自らがハンドルを握りアクセルを踏むべき。」と過保護な思いを断ち切れたように思います。その後、息子は、自身で勉学が必要と考えたのか、成績が上昇して数学と理科は学年で1桁台の順位になりました。
子どもの成長は、目標に向かって蛇行しながら進んでいきます。時に後退することもあります。大切なことは「口を出さず、主体性を尊重して見逃す勇気」なのかもしれません。大切な子どもが振るわない場面で「見逃し見守る」ことは親にとっては「勇気」です。子どもは成長するにしたがって、自らで選択し未来を切り開く力をもちます。私自身、2人の子どもが受験などの難題に立ち向かう度に、全面的に助けてあげたいと思ったことが幾度となくあるものの、保護者としての課題は、子どもの力を信じ見守る「親の力」を身につけることなのでしょう。
「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有する」と教育基本法10条にありますが、私たち保育者もご家庭と共に、子どもたちの自立心を育み、主体的に社会に貢献し、自らの役割を意識して「仕事」を選択し、強く生きる力を持てるよう、子どもたちを見守り支援して参ります。
小鳩グループ代表 山本 育子
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