代表者の一言
平成28年5月の代表者の一言
桜の花が咲き終わり、代わって花水木の街路樹が咲き、新緑が青空を背に耀く季節となりました。各施設に新入園児を迎えた私たちは、先ず、子ども達と の信頼関係を構築することに努めています。子ども達から、ご家族と離れた「見知らぬ場所」にいるという不安な気持ちをいち早く取り除き、「安心できる場 所」と感じてもらえるよう、先生たちは沢山の愛情を注いでいます。この時期には、私たちから求めたり急かしたりすることは禁物で、可能な限り子ども達から 求められるものに応え、意味ある働きかけをすることによって、「安心できる場所」を子ども達と一緒につくりあげていくことが肝要です。
保 護者の皆様も、最初は不安と何かしら罪悪感のようなものを抱かれるかもしれませんが、時の経過とともに、親子での時間から保育園での時間への切替え、ご家 庭と保育園間でのバトンタッチがスムーズになり、保育を必要とされた本来の目的が必ずや達成されるものと確信しております。新入園のご家庭におかれては、 不安な日々をお過ごしのことと拝察しますが、お互いが信頼し合って子ども達に「最善の場所」を提供することで、日々の生活のリズムに慣れた後には、ご家庭 と保育園とがともに子どもの成長を共感し、感動し合う時が来ることを楽しみにしていただきたく思います。
先日、日中 時間が空いて視聴したNHKのプロジェクトX「女たちの10年戦争」というドキュメンタリーで、30年前のいわゆる「男女雇用機会均等法」施行までの経緯 が描かれていました。私はこの法案成立前に就職したのですが、今思い出しますと、当時の女性の採用条件は、①自宅通勤、②結婚とともに退職、③短大卒業 生、④容姿端麗・・・と今日では有り得ない条件が並んでおり、履歴書には両親の職業を記入する欄まであったものです。自宅通勤ではなく、四大卒業、十人並 みの私にとってはかなり厳しい条件の中、上場準備にあたりこの新たな法案の成立を意識していた会社に、自宅外勤務の女性としてイレギュラーに採用はされた のですが、それでも、3年後の結婚の際には、結婚とともに退職という旧来のしきたりに従わざるを得ませんでした。私の学友の女性9割は、今も「結婚退職」 したままの生活です。一方で私自身は、その後間髪入れずに転職し、出産前後も退職せず、当時の民間会社では非常に稀なケースとして現在に至ったように思い ます。
この30年で社会は大きく変化し、「女性の社会進出」は今や「普通」のものとなり、素晴らしい活躍をされてい る女性が数多くおられます。私たちが思い、願い、訴えてきたことが確立されてきたことを本当に嬉しく思い、番組中の赤松元大臣などの言葉に、思わず涙しな がら画面を見つめてしまいました。それと同時に、これまで社会の制度として優遇されていたものが徐々に廃されて、本当の競争、実力社会になりつつあること も実感します。
子ども達は、いずれ大きくなって社会に出て、それぞれの役割をもって貢献します。そのときに一番大切 なことは、様々な逆境にもたくましく耐え、人を受け入れ、人を信じ、人を愛せることではないかと思うのです。そして、その礎は幼少期に育まれるものでしょ う。社会生活に移行するための心身の成長にとって大切な期間は、おそらくは生まれてから就学までの期間だと言われています。保育園はその大切な期間の大半 を過ごす場所であるのですから、私たちは、子ども達に本当に大事なものを提供するよう意識して、日々努力しなければなりません。3歳までは周囲からの愛情 によって人を信じる力を、4歳から6歳まではお友達との遊びの中から生まれる共感や他者への思いやりを、ひとりひとりのお子様が保育を通じてきちんと身に つけられるよう、本年度も職員一同「こばとのちから」を子ども達に注いで参ります。
小鳩グループ代表 山本 育子