代表者の一言
令和4年9月代表者の一言
コロナに戦争とネガティブなニュースが重なり、明るさを失いかけそうになった年度始めから半年、ようやくとコロナ前の日常を取り戻そうとする動きが始まりました。多くの事が人と人との触れ合いから創り出されることや、互いに思いやり相手の心に寄り添うことの大切さを、日常から実感できる生活が戻ってきました。この2年半、我々はリモートでできることを見出し実現しましたが、リモートでは得られないものを遡って取り戻すには、少し時間がかかるように思います。マスクで顔を隠し、接触を控えることで、言葉以外でのコミュニケーションが非常に希薄なものとなりました。同じ空間の中での触れ合いから生まれる発想、思い、夢など「コロナがなければ創出できたもの」を呼び起こし、取り戻していかなければなりません。特に成長過程にある子ども達は「子どもらしさ」を発揮できない環境にありましたから、伸び行く成長の芽にしっかり手を差し伸べ、その芽が再び力強く成長するよう支えることは、我々保育者の役割です。
ここ最近、コロナ禍で学校が日常的な場所ではなくなってしまっていたからか、子どもの「不登校」に悩まされる保護者のお話を度々耳にします。私の二人の成人した子ども達も、時々に登校に悩んでいたことを思い出します。子どもの不登校には子どもなりの理由があり、不登校に対して親が不安になったり、責めたり、また強要することで、かえって解決が遠くなるケースがあるように思います。私の場合、保護者の皆様と同じく、仕事などによって物理的に子どもに寄り添える時間が少なかったため、いつも「心」に寄り添うことに努めていたと記憶しています。子どもにとっては十分ではなかったかもしれませんが、言葉にせずとも親が最大の理解者であるという認識と信頼を構築することが重要なのだと思います。本当に子どもに自分が理解されていると感じさせるには、まずは心からあなたのことを信じ愛しているという思いを貫くことです。また、「情緒の安定」も大きく影響します。子どもが大人の意に反したことをしたときに、ダメ出しをするような言葉や否定的な働きかけをすると、子どもは自らの言葉を失い、自身のやりたいことを押し殺し、大人に追従してしまいます。おとなしく言うことを聞けることが優れているという評価は、子どもには当てはまりません。子どもは常に生活から何かを発見し、心と体を動かし、達成感の喜びを得ながら成長していくものです。そして、親の情緒にも左右されます。例えば、親の機嫌が悪いと、子どもも泣いたり、わがままを言ったりするようになってしまうことを経験された方もたくさんいらっしゃるでしょう。子どもが悩み、泣き、沈み、困っているときには、側にいる大人が優しく寛大に寄り添って受容的に傾聴することで解決することが多いのではないかと思います。
私事、理由は聞いていませんが、息子は大学を複数回留年しました。息子が入学して3年経った頃、それまで一度も訪れたことのない大学の学生課を訪ねたところ、入学した年の6月以降、一度も学校に行っていないということが判明しました。保護者へ成績表を提示しない大学でしたので、日中不在の私には知ることができなかったのです。早速その日、息子を近くのレストランに呼び出し、大学から呼び出された体にして学校に行っていないことを確認しました。息子は怒られると思ったでしょうが、私の方から「ごめんね、気付いてあげられなくて」と水を向けたら、息子が涙を流し「ごめん」と謝ってきました。「まだ復学の余地があるけど、どうする?」と聞いたところ、その後、自分で考え決断したのでしょう。復学し、その後、きちんと卒業してくれました。今では大学で学んだ「化学」の専門分野を生かし、企業で研究開発に携わることで社会貢献をしています。親としてとても誇らしいです。あのときに「なんで?」とか「どうして?」と強く責めていたら恐らく息子は復学しなかったでしょう。今こうして社会に出て、学んだ化学を活かして社会貢献できているということは、やはり蛇行しながらも成長していることを認め、寄り添った結果なのかと受けとめております。先日の息子の結婚式では、息子から、2回にわたり、このことに対する感謝の言葉(セリフ)をもらいました。息子の感謝の気持ちに感動です。
子どもの過ちは、年齢を問わず、成長過程において起こります。親として、それを「形式に当てはめるのではなく」「反論することなく」そして何よりも子どもの「挑戦してみたい」「今はこうしてみたい」をいつも尊重しながら寄り添えたことが良かったのではないか、と勝手に自負しております。25歳と29歳になる子ども達は、今でも、私が仕事に余裕がなさそうにしていると不安そうな顔で心配し、幸せな顔をしていると朗らかににこやかに接してくれます。保育園児だった頃と変わりません。改めて、親の役割は、いつも余裕をもって寛大な心で子ども達を包み込んであげることなのだと思います。
これは、会社組織でも同様です。上司の情緒が職場環境に影響しますし、保育者の情緒は、もちろん園児達に影響します。小鳩グループのスタッフ達が、皆、気持ちを安定させて仕事に従事できるよう、事業者として寛大な心で包み込むことに努めたいと思います。
小鳩グループ代表 山本育子
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