代表者の一言
令和5年度10月代表者の一言
9月は残暑に尽きたひと月でしたが、10月に入ると一気に秋を感じる日々となりました。今年の夏は「猛暑」のため、戸外活動を控え、開放的な過ごし方ができなかったご家族も多かったのではないかと拝察します。1年で一番過ごしやすい季節を迎えた今、充実した余暇を楽しんでいただければと思います。
私事、9月中旬に遅めの夏休みを取り、インドに行って参りました。インドといえば、今年、人口世界一となった大国であり、IT関連産業を中心に勢いがあり、古くは文化や産業、貿易の中心でもありましたので、そこから膨らませたイメージと現実が、どの程度重なるのかを確かめる旅でもありました。
デリーに到着すると、街は人で溢れかえり、夕方には三人乗り・四人乗りの家族全員を乗せたかのようなバイクがひしめき合い、バイクと自動車が接近して走るため常にクラクションが鳴り響く、正に「喧噪」でした。真っ先に感じたことは、交通渋滞と溢れるバイク・自動車からの排気ガスによる空気の汚れです。道端にはごみが散乱し、観光地や外国人向けの宿泊施設以外、衛生管理が全く行き届いていないとも感じました。G20開催の直後でしたので、街角にそのPRツールがまだ残っていたのですが、終了した会議のポスターの一部が破れたり汚れたりしたまま放置されていて、日本では余り見ない光景でした。河口近くを訪れると、河岸に上流からのごみが寄せ集められていて、コンテナのごみ箱には街に放されている牛が群がっていました。この様子を目の当たりにし、私は、幼少期に見た日本の昭和40年代の光景を思い出しました。
私の育った街は河口に近い工場地帯にあります。正に現在のインドの光景と重なるものがあり、河口にはごみが集まり、水面は淀んでいました。衛生面が良好とはとても言えなかった記憶です。水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそく等は、水質汚濁や大気汚染の結果生じた公害病ですが、廃水や汚染物質を何ら対策なくそのまま排出したことが原因です。幼い頃、舗装されていない道を駆け抜けて川に行き、「汚い」とは余り思わず、川遊びをしていたことを思い出しますが、インドの子ども達も同様で、幼い素直な表情で目をキラキラさせ、たくさんの興味関心をもって辺りを見回し遊んでいました。サービス仕事の10代くらいの子が、私の持っていた扇子に珍しそうに見入っていたので、たたみ方や構造を見せながら説明し、扇いで風を起こしてみせると、とても感動してくれました。私達にとっては当たり前の扇子の構造をチェックしている目に、新たな創造力が拡がっている大切な瞬間を感じました。
先ほど回想した昭和40年代から既に50年以上が経ちました。この50年間、日本は、一人ひとりが人権を守られながら文化的に成長し、教育や学びを充実させ、環境を整え、社会に貢献することに努めてきました。とりわけ現在は、将来の不安を減らすべく、サステナブルな地球環境の実現を重んじる人々が増え、本当に素晴らしいことと感じています。今後は、いまだ発展途上の国の人々においても、基本的人権が十分に尊重され、必要な教育を受けることができ、経済的にも発展していくことを切に願います。
世界中のどの場所に行っても共通することは、幼少期の素直でかわいい子ども達の姿です。好奇心旺盛に、愛くるしい笑顔で見つめてくれるあどけなさ、その姿は本当に愛おしいものです。人はこの世に平等に生を受けますが、生まれた後の環境の影響は、年月を経て人を変化させます。だからこそ、子ども達の素直な成長力を支援することが大事だと、改めて痛感します。
インド滞在中に一貫して感じたことは、皆、日々の生活に一生懸命で、家族を大切にし、信心深いことです。過日訪れたモロッコでは平均寿命が60歳ぐらいと聞いて驚きましたが、インドも聞くところによると65歳前後だそうです。私自身還暦を迎え、訪れる国によっては平均寿命とされることもある年齢となりました。この先、自身が社会で果たしてきた役割や重ねてきた経験に基づいて、後進に道を譲るため、その伝授にも努めなければいけないとの思いが、今回の訪印でより一層深まりました。子ども達が心豊かに、人を愛し、夢を実現するようになること、その一助となれるよう引き続き尽力したいと思います。
小鳩グループ代表 山本 育子
過去の代表者の一言を見る