代表者の一言
令和元年10月の代表者の一言
朝夕ともなると秋風を感じる長月のこの頃です。今年は夏が短く、台風の到来によって、いつの間にか夏が連れ去られたのではないかと思うほどです。9月9日未明に関東地方を直撃した台風15号は、とても強い勢力を保ったまま首都圏を直撃しました。房総半島を中心にこの台風で被災された方がたくさんいらっしゃいます。被災された関係者の方々に、心よりお見舞い申し上げます。
保護者の方々の中にも、お子様を保育園に預けることはできたものの、交通機関が不通のため、混雑下の駅などで耐え難い待機時間を過ごされた方もいらしたと聞いております。また、地下鉄以外の鉄道路線がほぼ運行を見合わせていましたので、職場に向かおうにもその手立てがなかった、というお話も多くの方からお聞きしました。
私達も同様で、職員皆が勤務地から徒歩圏に住んでいるわけではありませんので、今回のような大型台風や豪雪などの影響で通勤に支障が及ぶことが予測される場合は、近隣のホテルをスタッフ用に手配したり、シフトを調整したり、場合によっては施設内に前泊させるなど、用意周到に事に臨む必要があります。保育所は社会福祉施設ですから、決まった時間にお子様を受け入れることが責務です。そのためには、本部の体制も重要で、朝一番にきちんと職員を配置できているか、施設に被害が生じていないか、両面から確認しながら子ども達の受け入れ体制を整えています。
今回の台風は、海から直接関東エリアに上陸し、近年経験したことがないレベルの暴風雨でした。当園でも、ある程度予測されたとおり、早朝の停電や電話の不通、少量ではあるものの雨水の吹込み等、施設被害はいくらかあったものの、迅速に片付け、関係各所へ連絡して、修繕や復旧を待ちました。そのかいあって、幸い「小鳩スマート保育所大森」以外の施設では、利用者の皆様にさほどのご不便をおかけすることなく、通常どおり運営を開始できました。
大森の施設については、前日から職員配置が困難になると予想されたため、久しぶりに私自ら保育士として現場に入ることにしました。早朝、未だ暴風雨の中を駅に向かい、案の定地下鉄は間引き運転中でしたが、どうにか定刻に施設に到着することができました。けれども、施設は停電していて電話も不通、調理室はIHコンロのため昼食の準備に取り掛かることもできず、私は、事業者としての対応策の決定と、保育の提供を同時に求められることになりました。午前中の涼しい時間帯でしたから、エアコンが効かない中で窓を全て開放し、近隣の「小鳩ナーサリースクール中馬込」へ園児を社用車で移動させるべく、大田区の許可を得て、二往復して私を除く職員と子ども達全員を中馬込に移動させ、移動先での職員らの協力もあって、中馬込で大森の子ども達に給食を提供することができました。
お昼過ぎになって大森の施設が通電したことから、保護者の皆様の利便性を考えると午睡前に子ども達を大森に戻すことがベストと考え、再び全員で帰園することに決めました。万が一停電が続くようであれば、保護者ごとにお迎え時間を確認し、大森に戻るチームと中馬込に残るチームに分けて対応するなど、様々なことを想定していましたが、停電がそれほど長引くことはなく、子ども達全員が帰園して午睡入眠できました。大田区と連携を取りながらの慌ただしい一日でしたが、無事何事もなくこの時間を乗り越えることができました。子ども達はといえば、この騒動の中、むしろ車に乗って移動したことや大森から中馬込に異動した先生に会えたことで、「遠足のように楽しかった」と満足気でした。
私は、大森の施設でお布団を敷き、子ども達の帰りを待ちながら、事業者自身が、直接現場で体験することの大切さを受けとめつつ、今回の台風の影響を一番受けた施設に、偶然にも自身が居合わせて貴重な時間を過ごせたことに、ある意味良かったと思いました。というのも、今回の台風は、私たち事業者の大きな課題を明らかしてくれたからです。災害時の対策として改善すべき項目やCHECKすべき項目を改めて確認することができましたので、これを機に、災害マニュアルの必要な見直しに努めようと思っています。
その週の金曜日朝8時半頃、蒲田駅周辺を歩いていると、大森へ登園中の園児が、私を差してにこやかに話しかけてくれました。後にスタッフから、「山本先生が来ると、また、車に乗って遠足に行けると子ども達が運転の真似事をして喜ぶんですよ。」と聞きました。いつの間にか遠足の先生になってしまいましたが、災害の中でも子ども達が安全に楽しく過ごせたことは、とても素敵なことで、私自身にとっては有意義で思い出の残る一日ともなりました。
小鳩グループ代表 山本 育子
過去の代表者の一言を見る