代表者の一言
令和5年度9月代表者の一言
今年の夏休み、街中ではコロナ禍前のように余暇を楽しむ人々の姿が見られました。久しぶりの家族旅行や各種イベントを楽しまれるなど、いずれにしても親子で有意義な時間を過ごされたことと拝察します。他方、この夏は異常とも思われる猛暑で、連日の熱中症警戒アラートの中、保育園ではやむを得ず水遊びも外遊びも控えることになりました。
小鳩グループでは、「遊びを豊かに」という考えから、どの施設でも子ども達の「やってみたい」が実現できるような室内環境の整備に努めており、各施設を巡回する際には、「やってみたい」遊びをそれぞれ創意工夫しながら楽しんでいる子ども達の姿を目にすることができます。手元を覗き込むと、「こんなことができるんだよ」「見てみて」などと、創ったものを披露してくれます。「すごいね」と褒めると、また次の創作をして見せてくれます。このようにして子ども達が自然と創造を繰り返し、成長していく場面を目の当たりにすると、私達保育者の言葉や行動が、一人ひとりの持つ芽をきちんと伸び行く方向に伸ばすこと、子ども達の「できるよ」を「自信」にし、さらに創造力を育てて生涯にわたる生きる力を育むことにつながるのだと再認識します。
私自身も、様々な環境下で多くの人に出会い、それによって今の自分が在るのだと感謝の気持ちをもって振り返るようになりました。昨年、出身大学のHPの企画で卒業生としてインタビューを受ける機会があり、何を話そうかな…と思案し、学生時代から今に至るまでのプロセスを中心にお話しすることにしました。このとき、年代ごとの「役割」というものを改めて考えさせられました。私自身の残りの人生での役割についてもです。偶然にして「育子」と名付けられ、名前が自分自身を司りこの事業にご縁を得た、とお話しさせていただくことがあります。この世に生まれ、命名され、現在に至るまでたくさんの教えや導きがあったことを想うと、正に人は一人では育たず、たくさんの愛情と関わりの中で育つものだと受け止めます。母校の創立者の「幸福は感謝にあり」という言葉を、この歳になって新たな気持ちで捉え、感謝をもって後進に道をつないでいくことが今後の私の役割です。
個人的に徳川家康をリスペクトしている私は、今年の大河ドラマ「どうする家康」を前のめりで視聴しています。数回前の放送で、家康が石川数正に対して「王道を以て覇道を制す。」という言葉を述べるシーンは、心にずんと来るものがありました。覇道は武力・権力による統治、王道は仁徳に基づく思いやりの政道です。家康が260年余り続く幕府の礎を築けたのは、この王道を貫いたことに紐づくと思います。家康が、他に感謝し意見を委ね、戦いのない社会を作ることを目標として突き進む姿は、正に現代社会でいうマネジメントだと感じます。今の社会において、権力や圧力で一方的に制することは是とされません。徳川マネジメントとでも呼べるでしょうか、真なる信頼関係を構築し、他に感謝して物事を受け入れる取組みが、人を成功へと導いてくれます。また、そのことをも超えて、個々人が専門性を身に着け学び、一人ひとりが専門分野において意欲をもって社会貢献する働き方が新しい就労のスタイルとなっているとも思います。
自らの専門性を伸ばすこと、そのための基礎的な部分には、幼少期の環境も関わっています。子ども達が「やってみたい」ことを実現し、展開できることが基盤となります。保育の場において、遊びたい遊びができる環境を整え、潜在的能力を引き出し伸ばせるよう取り組むことを、今後とも継続したいと思います。令和の時代になり、サステナブルな環境づくりを重んじる思考が重要視され、その実現にどう取り組むべきかが課題となっています。重圧的にならず、個々の勝手でもなく、人々が互いを信頼しながら協同的に生きることができる社会環境を構築していくことが、子ども達の育ちをより良いものとします。
我々保育者一同、これからも「子ども第一主義」の精神をもって、保育に勤しんで参ります。
小鳩グループ代表 山本 育子
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