平成29年10月の代表者の一言

先日、友人宅を訪問し静かにお茶を飲んでいた時、マンションの隣室から子どもを叱咤するお母さんの声が聞こえてきました。とてもエキサイトしているようで、その声が周りに響き渡っており、友人は「あー始まった。3人男の子がいるみたいでお母さんがいつも叱ってばっかり。あまりにも子どもの嗚咽がひどいので時々警察に通報しようかと思うくらい。」とつぶやいていました。

現在、国、地方自治体だけでなく民間レベルに至るまで、社会全体で子どもの虐待防止に向けた施策や取組が行われています。児童虐待を受けたと思われる児童を発見したら福祉事務所か児童相談所に通告しなければならないと法律に定められており、通告があれば、状況に応じて、安全な場所での保護、心身のケア、良好な親子関係の構築に向けたサポートという一連の仕組みが整っています。私達保育士もその一翼を担っており、当施設に通う園児か否かにかかわらず、子どもに虐待の疑いがある場合、関係行政機関と連携をとりながら子ども達を見守っていく責務があります。友人の言った「通報」は、今や当たり前の行動と言えるものになっているのです。

他方、私達は、保護者の皆様と信頼関係を築き、その関係を基礎として皆様の意思を尊重するよう努めています。私が育った昭和の時代は、学校では「先生」、家庭では「親」の教えが絶対とされ、周囲の者は有無を言わずに付き従っていました。父親は仕事、母親は育児家事という家族形態が基本であり、高度成長途上にある経済状況にあって社会全体の上昇志向が強い中、上の者からの「厳格な教え」や「厳しいしつけ」が主流の「一方向的」な時代でした。しかし、時代の流れとともに、情報量が増加し環境が成熟したことにより、個が一層尊重され、お互いを認め信頼し合うことを大切にする「双方向的」な社会へと変化し、一人の子育てが沢山の関係者との信頼関係と愛情に基づくようになりました。その中で、私達は、保護者の皆様のご意向を踏まえながら、多くの刺激を受ける子ども達が、複雑な環境の中で最も情緒が安定する場所を見つけられることを大切しています。西洋では古くから子どもの発達に関する研究がなされ、フレーベルやピアジェの思想や理論が今の保育の基本となり私達を導いてくれています。子どもという「真っ白い画用紙」がいつの間にか有らぬ色で染められ、主体性を欠く子どもにならないよう、見守り、導くことが私達の仕事の大きなテーマの一つです。

私自身の初めての子育てでは、子どもを外敵から守り、親が良かれと思うこと間違っていると思うことに、ただ同調させていたことが少なからずありました。でも、親が良かれと思うことが必ずしも子どもにとって良かれではなく、親が間違っていると思うことが必ず間違いというわけではありません。危険から子どもを守りつつも、自身の価値観を押し付けず、子どもの行動と言動を優しく包み込むことで主体性を育み、「今」を素直に感動している子どもに応えることで、創造性と感受性が豊かで、何よりも挑戦することに積極的な子どもにと導くことが大切だと、この仕事を通じて今さらながら痛感しています。子ども達は愛情を糧に成長します。叱りつけるのではなく「意義付け」をすることが大人の役割です。

既に成人になった我が家の二人の子に「あのときはあんなことしてしまってごめんね。」と話すことがありますが、昔話として普通に笑って聞いてくれる二人に救われます。過去を消しゴムで消すことはできませんが、私の心に大きく刻まれている事があります。

これから子育てに取り組むお父様・お母様には「一呼吸おいて!子どもは嘘をつくことも失敗することも沢山。でも、一生懸命芽を出しながら成長している。だからその芽をきちんと伸ばしてあげよう。」とお伝えしたいと思います。余裕のない「一瞬」にこそ大きな深呼吸。その「一瞬」をたくさん乗り越えて、お子様に愛情を注いでいただくことを願っております。

 

小鳩グループ代表 山本 育子