令和元年9月の代表者の一言

今年の梅雨明けは例年より遅く、8月に入ってようやくと本格的な夏を感じ出すという気候の移り変わりとなりました。近年、少なくとも都内のレジャー施設では、どこでも子どもに優しい配慮がなされ、子育て中のファミリーが安全に楽しく過ごせるようになっています。子ども達の声や笑顔は、周りの空気をほんわかと幸せ色に変えてくれます。まるで魔法使いです。私達は、未来に向かって成長する純粋な子ども達を支え、より良い社会の創造を常に志さなければなりません。大人の関わりが子どもに大きな影響を与える、正に「保育」はこれに当たるものだからです。

「虐待」「ネグレクト」等、大人の都合で抵抗できない子ども達が犠牲になる最近の不幸な事件やニュースに接するたびに、とても悲しい気持ちになります。保育所は、児童相談所等の関係機関とともに、虐待を早期に発見することなどにより、子ども達を守っていく責務があります。また、現在、東京では、児童虐待の再発防止を目的として、検察庁が主体となって警視庁、児童相談所、病院、学校、保育所等の関係機関との間で対応方針について協議する試みがなされています。先日、私も出席する機会をいただいたのですが、その席上で、改めて子どもを「権利の主体」とした保育を提供することの社会的責務を感じ受けとめました。

私達は社会福祉の理念に則り、子ども達のために誰にも勝るとも劣らない愛情表現、すなわち目の前の子ども達の幸せを心から願い表していかなければなりません。大人の都合でもって子どもに接することがいかに子どもの芽を摘んでしまうのか・・・ある一定の尺度で他の子と比較したり、子どもの意に反して親の理想に無理やり近づけようとすることは、「愛情表現」ではなく「強制」「指示」になってしまいます。母親のおなかの中に命を授かったときから、まずは母性的な愛情を受け、生まれ出た後は多くの人から愛情を受けて育っていくことがいかに大切な事か。たくさんの愛情を受けた子どもは、恐れず人を信じ、様々なものを受け容れる力を持ちます。「あれしちゃだめ。」「なんでそんなことするの?」「もういいから早くしなさい。」といった言葉は、いつの間にか子どもの伸びやかな芽を摘み、委縮させてしまいます。満三歳を迎える頃になると自然とお友達関係ができてきますが、その頃までに子どもの人格形成が潜在的になされていることを、十分理解して保育に携わることが重要です。

「強制」や「指示」には、子どもの将来を考えた末の親御さんの思いがあるのかもしれません。しかし、本当に子どもにとって大切なことに気付かなければなりません。一呼吸おいて、子どもにとっての最善の利益、つまりは本当の愛情をもって接することが大切です。特に一人目の子育てでは、子どもに対して強い理想を抱いてしまう傾向があると言われており、私自身も、長男には自分の都合で厳しく接してしまったと思うところがあります。ただ、多くの先輩方のアドバイスや様々な経験により、徐々に子どもの主体性がいかに大切かということに思い至るようになりました。主体性=どれだけ愛情を受け許容されたかということです。愛情は人を信じ受けとめる力を育み、愛情により将来の社会性を身に付けるまでになります。私は二人目の子どもには「勉強しなさい」と言ったことがありません。一方で、中学生になると「青春に落とし物をしないように」と言い続けました。その結果、自分自身で考え、道を開くことができる子に育ったように思っています。

保育者の責務は、子どもを型や理想に当てはめるのではなく、子どもの生きる方向に向かって「受けとめ寄り添っていく」ことです。そして、社会全体で「受けとめ寄り添っていく」ことができれば、必然「虐待」もなくなっていくのではないでしょうか。このような考えが広まるよう、当園でも、「子ども第一主義」の理念に基づく保育の実践を継続し、社会に向けてこの理念を伝えるべく努力して参ります。

小鳩グループ代表 山本 育子